2022年11月12日(土)

 2週間前、妹が男の子を出産したというので、実家に顔を出す。子をいつくしんでいる妹、なんだかわたくしのしるそれと大きく隔たりがあって素朴に不思議。同居していたころは妹もまだ中学生で、わたくしが実家をでてからそう頻繁に交流があったわけでもないので、ほんと、不思議としかいいようがない。彼女は彼女なりに人生を積み重ねてきたはずで、しかしそれをわたくしは決して知ることなく別々の人生を歩んでゆくんやな。

 祖父母も90近いが、体はなんとか丈夫でいてくれている。祖父は半年前まで毎日自転車と徒歩で2時間近く運動するのが日課だったらしいが、いよいよ骨があかんことになり、手術とリハビリを経ていまは杖をいかにも億劫そうについて歩いている。退院の直前に同室の人がコロナ感染、祖父も濃厚接触者扱いで退院が伸びたそうだ。それをいかにも大事件のように、話したくてたまらないとでもいう調子で語ってきかせてくれて、祖父にとってはほんとうに一大事だったのだろうと思った。

 祖母も物覚えが悪くなり、自分がいったことを十分には覚えていられないようだったが、ひ孫を目にしてはしゃいで、「おまえらもばあちゃんがそだてたんだから...」と繰り返し、周囲の微笑を誘っていた。こういう些末なディテールはつねに忘却の海に消えていく。祖父母と接する機会があとどれくらいあるかもわからない。年明け、蔵書の整理にいったん帰るつもりだから、その時に元気な顔をみられたらいい。こういう気持ちがわいてきたこと、それがわたくしも年をとったということの何よりの証拠なのかもしれない。